● 山北に来た槙姫・内膳             
                            2019年10月15日 改訂

 揺れ動く時代の「御成門」、「奥納戸」に文助日記から以下の引用をしました。
 そこに出て来る、槙姫、内膳を調べてみました。

(1)槙姫
 文助日記から
『同(弘化四丁未)年二月廿八日南御屋鋪槙姫様山北村浅上宮江御参拝本家恒之進
 方ニ而・・・・』

 

 「南御屋鋪槙姫様」とはどこの人で何歳だったのでしょうか。南屋敷ですが、
山内家も嫡男対策か分家を多く作っています。
 徳川家の紀州、水戸のようなものでしょうか。
 西邸、追手門、南邸、本町などがあります。
 この南邸が南御屋鋪に対応するのでしょう。高知駅改札口前にある観光案内地図に、山内容堂と西郷隆盛の会見場所とあります。平尾道雄著「土佐藩」に掲載された系図を見ると、豊著が南邸分家創設し弘化三年に隠居しています。その頃の系図が次です。
 豊著(とよあきら)享和二年五月二日生
   →女子 真須・六条有容室
   →女子 遊稀・山内氏理妻
   →女子 釙(とし)深尾重哀(ゆき)妻
   →女子 □(*該当漢字なし)櫛笥隆韶室
   →豊信(とよしげ) 輝衛 兵庫助・文政十年生 嘉永元年 本家相続(容堂)
   →女子 鈴・上杉勝道室
   →豊済 靱負 五味豊亨養子
   →女子 直(ただ) 山内繁宣妻
   →女子 兎勢・山内豊樹(山内西邸二代目)室
   →豊積 (とよつむ)督三郎 兵之助 天保五年生 嘉永元年家督相続
   →豊盈 秀馬 東邸豊誉(慶応三年相続)後嗣
   →女子 騂(ひさ)のちに恒 山内豊資養女→三條公睦室  妻
   →豊誉(とよなり) 民部、兵庫・東邸山内豊道の養子
   →女子 銓・山内豊章妻
   →豊吉(とよえ) 乙寿 長齢(ながせ)南邸別家創立

  槙姫→眞喜→萬寿→六条家へ    2014年6月30日追加
 女子が九人ほどいますが、槙姫の名がありません。槙姫の翻刻に誤りがあるかも知れませんが似た字もありません。女子の生年月日が記載されていませんので、近くの兄の生年月日から推定すると、豊積(とよつむ)天保五年生まれ弘化四年は十三歳、豊信(とよしげ)文政十年生まれですので弘化四年は二十歳となります。現在に比べ早婚ですので二十歳前で豊積より上とすると鈴、直(ただ)兎勢になります。資料「山内家史料 幕末維新 第二編上」に以下の記載を見付けました。
   
嘉永六年 十二月廿九日 南邸雅五郎君第一女眞喜姫名ヲ萬壽ト改ム
 
 前述の長女「真須」が「槙=眞喜」ではしょう。豊信(容堂)の姉にあたりますので山北に来た時には、二十歳を過ぎています。
 さらに
十五代豊信公紀(第七巻~第十二巻 安政元年~安政六年)

   安政元年十一月十九日
    南邸雅五郎君長女眞喜姫三位六條有容ト婚約成リ尋イデ名ヲ萬壽ト改ム


 六条家の室となっています。山北訪問七年後に嫁いだようです。年齢は三十前後だったのでしょうか。昔にしては晩婚です山北の思い出は残っていたのでしょか。
 

 
六条家へ嫁ぐ前に    2015年1月13日追加
 郷士の場合、代が変わるとき先祖書を藩(半紙で数枚)指出しています。同じように藩主が変わったときも先祖書を出すようで、大きさは縦1メートル、横3メートルのに一杯に初代から書かれています。天保十五年豊凞就任の時提出されたのが山内家宝物館に展示されていたのを観ました。
 その中に槙姫の記載があり、名前には眞喜、猪嘉、英とあり文政五壬午八月廿六日生母妾平石氏女許嫁山内千之助氏理依病症離縁とあります。一度目は主人が病死で離縁し、前述は再婚のようです。上に当時にしては珍しく晩婚と書きましたが、間違っていました。


(2)内膳
 
平尾道雄著「土佐藩」によると、「豊矩(とよかね)内膳、郁松 分家本町邸 文政八年生 嘉永六年六月八日卒す 二十五歳」とありますので十三代藩主豊熙(てる)の弟に当たり、山北に来た時は二十二歳で、三年後に亡くなっています。
 文助日記(下写真)によると、豊矩は高智→此江→小川(コガワ)→岡内→大栃→山北のコースを通ったとあります。土佐一宮から領石、山田、大栃から塩の道(現在再現)から山北に来たのでしょうか。次の公紀に以下の記載があります。
『山内家史料公記 天保十四年~嘉永元年 弘化四丁未年(四月)
  廿六日於山北村御滞座同日同所権現宮江御參拝被成

 
 
内膳は次の御詠歌を送ったと文助日記(下写真)にありました。
 千年経る松乃久風志し澄て八千代栄む宿そ目出度   豊矩

 
 
 豊矩の弟豊範が十六代藩主になり、文久二年に江戸参勤しす。この参勤に恒之進が随行し、大坂で麻疹に罹り亡くなっています。藩主豊範と15年前に山北に来た兄上の話でもしたいたら面白いですが。


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